彼らのお話の始まりの集まり
高校生になっても、年度初めの自己紹介なんて退屈なものだった。
CHAOS;CHILD 伊藤真二 宮代拓留 朋友オセロ
伊藤真二は前から数列目の席であくびを噛み殺す。本音と嘘と裏切りと親愛
「これ、誰だか心当たりは?」
CHAOS;CHILD 久野里澪 朋友オセロ 百瀬克子 神成岳志
「先輩!? うっわ、若……! 昔から百瀬さんと知り合いって本当だったんだ」彼の足跡の追随
「本気で言っているのか?」
CHAOS;CHILD CHAOS;HEAD 判安二 神成岳志
上司の責めるような口調に、神成岳志はなるべく人好きのする笑顔で頷いた。きみはみんなのおにいさん
二〇一五年。神成岳志は、渋谷警察署の眼前に長々と渡る歩道橋の上で、漫然と渋谷の夜景を眺めていた。
CHAOS;CHILD 久野里澪 百瀬克子 神成岳志子供はまだ微睡の中
この階段を上るときは、いつだって冒険心と引け目でドキドキした。
CHAOS;CHILD CHAOS;HEAD 久野里澪 百瀬克子 神成岳志
堂々と前を行く背中がないだけで、こんなにも心持が違うものかと、神成はぼんやり考える。針はなくとも時計は動く
「知ってますか、百瀬さん。コーヒーを飲んでるとね、吐いても口がまずくならないんですよ」
CHAOS;CHILD 百瀬克子 神成岳志香雪蘭の根元で
「は? 誕生日? 誰の」
CHAOS;CHILD 久野里澪 神成岳志
「私だよ。肉体的にそうなった時間は知らないが、書類上は本日午前0時に満19歳になった」2017年5月21日
独房での接見なら何度か経験したが、宮代拓留は今日初めて、面会室に踏み入った。
CHAOS;CHILD 宮代拓留 神成岳志溶ける泡沫
『今夜少し、お邪魔しても構わないかな』
CHAOS;CHILD 南沢泉理 神成岳志
神成岳志が、青葉寮の固定電話に連絡をしてきたのは、6月9日の6時過ぎだった。吾が姿を見よ
『このところ渋谷に不穏な気配はない。碧朋学園も』
CHAOS;CHILD 久野里澪 神成岳志
ここまで書いて、神成はペンを止めた。都合のよい夢
「うわ、神成くんまた勉強してんスか? 飽きないッスねー。事件のないときぐらい緩く過ごせばいいのに」
CHAOS;CHILD CHAOS;HEAD 判安二 神成岳志 諏訪護
コーヒー片手に声をかけてきた諏訪護巡査部長は32歳。神成より年上なのに、百瀬には『神成ちゃんより若々しい』と言われている。命を呼ぶ水
「いらっしゃい。今年は素面なのね」
CHAOS;CHILD 百瀬克子 神成岳志
「ええ、まあ。飲んで騒ぐような歳でもないですし」私は貴女にはならない
「ねぇ、ミオも大人になったら、お酒を飲んだりタバコを吸ったりするの?」
CHAOS;CHILD Children's Collapse 久野里澪
エリザベスの唐突な問いに、澪はひとまず瞬きをすることでしか返せなかった言葉の定義としましては
『今度いつ日本に帰ってくる?』
CHAOS;CHILD 久野里澪 神成岳志
名乗りもしなければ前置きもなく、ただ早急に用件を済ませたいという口調で神成岳志は言った。ありふれたメリークリスマス
「イブ? パーティでもするのか」
CHAOS;CHILD Children's Revive 橘結人 神成岳志
「結人もうきも、みんなでやりたがってるんです。有村と香月にも声をかけていて」これは呪いだと知っていた
「こんばんは、百瀬さん。今年は義理チョコ禁止令が出たんで、特に何もなくてすみません」
CHAOS;CHILD 百瀬克子 神成岳志
「本命を横流しするのはもうやめたわけね?」神成さんと、そのあとで。
神成岳志。あらゆる意味で、わけのわからないことが多すぎる男。
CHAOS;CHILD Children's Revive 南沢泉理 尾上世莉架 山添うき 有村雛絵 神成×泉理 神成岳志 香月華壊れたオリジナルデータ
澪はしばらく宮代の暮らしていたトレーラーハウスの前に座り込んでいた。
CHAOS;CHILD 久野里澪 拓留×久野里 神成岳志
雨音が耳障りに鼓膜を震わすけれど、苛つく余力もない。○○しないと出られない部屋
「や。目が覚めたか」
CHAOS;CHILD 久野里澪 神成岳志
悪党のような台詞だが、声の主がそんなに器用でないことぐらい、澪にも解っていた。昭和生まれの最後らへん
刑事の花形、警視庁捜査一課。
CHAOS;CHILD CHAOS;HEAD 判安二 神成岳志 諏訪護
ひとたび事件が発生すれば犯人逮捕に尽力し、華麗に解決――そんなのはドラマの中の話で、実際刑事のオシゴトというものは地味な努力の連続だ。非常識なまでに常識的な貴方
「信用調査会社?」
CHAOS;CHILD CHAOS;HEAD 判安二 神成岳志
神成岳志は、先輩刑事・判の口にした単語を、不快感も露わに繰り返してしまった。池袋乙女ロード殺人事件
池袋で見つかった変死体。
CHAOS;CHILD CHAOS;HEAD 久野里澪 判安二 神成岳志 諏訪護
判は部下の諏訪・神成を連れ捜査を開始する。赤い祝福
乾ききった霞ヶ関から、丸ノ内線で新宿まで寄り道。二〇〇七年も十二月の街はクリスマスムード。
CHAOS;HEAD 諏訪護
諏訪はこの雰囲気が嫌いではない。片手の行き先
判安二は、雑居ビル内の金属製のドアに寄りかかり、うとうとと舟を漕いでいた。
CHAOS;HEAD 判安二 百瀬克子
2006年9月25日。東京都渋谷区の天気は晴れ、最高気温は25度近いそうだ。ミッシング・リム
「大輔。やっぱり西條、どこにもいねぇって」
CHAOS;HEAD 三住大輔 咲畑梨深 西條拓巳
「そか。あんがとな」
三住大輔は、情報を集めて来てくれた友人たちに、いつものように白い歯を見せて笑いかけた。ディスコネクト・トリガー
渋谷の街はどこもかしこも崩壊しているように見えた。
CHAOS;HEAD 三住大輔 咲畑梨深 朋友オセロ 西條拓巳
西條拓巳は咲畑梨深に手を引かれ、青空の下、瓦礫だらけの『町だった場所』を、漫然と歩いている。混沌の先達たちから
「はぁ!? この状況でCLとかハナカツヲマジどんだけ劣悪な環境でインして来てんだよ! エンスーは遊びじゃないんだぞ!?」
CHAOS;HEAD 咲畑梨深 拓巳×梨深 西條拓巳
僕の名前は西條拓巳。職業は自宅警備員。本日の主役
「タク、お誕生日おめでとー!」
CHAOS;HEAD 咲畑梨深 拓巳×梨深 西條拓巳
バカみたいな円錐からバカみたいな紐が飛び出る。拓巳は眉をひそめて、自分の髪に引っかかった紙くずを払いのける。廻るペルソナ
二〇〇九年九月、残暑も厳しいある夜のこと。
CHAOS;CHILD CHAOS;HEAD 神成岳志 諏訪護
警視庁捜査一課の神成は、上司である警部補・判安二に『暑気払いに飲みに行こう』と声をかけられた。あの判安二に、だ。第三夜
病院は嫌いだ。何度訪れても慣れることがない。諏訪護はこの清潔すぎるハコの中で、薬品の臭いに眉をひそめる。
CHAOS;HEAD 諏訪護
「あら。おかえりなさい、護」
「ただいま、志乃」翠雨の頃
「座って何か飲んだらちょっとは落ち着くよね。タクが行きたいカフェってどっち?」
CHAOS;HEAD 咲畑梨深 拓巳×梨深 西條拓巳
「か、カフェっていうかコラボカフェ、レコード屋と併設の……何でそんなオタクと対極のとこでやるんだよ、馬鹿なの死ぬの!? 限定描き下ろしグッズの星来があんなに神ってなければこんなとこ来なかった!!」及び腰の残影
「三住は全然変わらねーなぁ」 「いやー、変わったろ? よりいい男になったっつーか」
CHAOS;HEAD 三住大輔 西條拓巳
「はっは、ウゼー」
高校卒業から十年。同期との会話のテンポは、確かに高校の頃と変わらなかった。The Catcher in the Crazy City
「――キミもよくよく物好きだねぇ。もう何の義理もないだろうに、そんなに律儀に僕を捜して」
CHAOS;CHILD 久野里澪 神成岳志
背後から、人を食ったような声がする。幻聴ではない。神成はこの声に聞き覚えがある。ずっと捜していた、一方で見つかりそうにないと思っていた男。もっと馬鹿ならよかった
僕がその転校生を気にし始めたのは、やはり彼女の正体を知ってからだと思う。
CHAOS;CHILD 久野里澪 伊藤真二 宮代拓留 拓留×久野里
ネットラジオ『渋谷にうず』。その管理人である彼女は、得意顔で間違いを撒き散らす他の情弱とは違う。本当の情報強者だ。ささいなささいな古い癖
「あ、久野里さん。火ィあるか?」
CHAOS;CHILD 久野里澪 神成岳志
フリージアの応接間で百瀬の帰りを待っていた神成は、入ってきた別の女性を見るなりそう口にしてしまった。
「私は、未成年、ですよ。『有能な』刑事さん」だいぶおかしな僕と君
「なんか、甘い匂いがするな」
CHAOS;CHILD 久野里澪 神成岳志
「あ? タイムスリップでもしてきたのかあんた。エキナカのスイーツなんて今日び珍しくもないだろう」みかんを食べたら帰ります
『こたつ要るか? こないだストーブの電熱線切れたとかって聞いたから。要るなら持って行こうかなと』
CHAOS;CHILD 久野里澪 神成岳志いつも少しだけ不自由
「恋人かと訊かれた。ここの警官は不躾だな」
CHAOS;CHILD 久野里澪 神成岳志
「人相を教えろ。あとで誤解だと重々言い聞かせておく」流行おくれのおにいちゃん
「根強いガラケーユーザーは未だに結構いるんだからな」
CHAOS;CHILD 久野里澪 神成×久野里 神成岳志
「グダグダ言ってないで機種変しろよ! 物に愛着を持つのも結構だが大概にしろ、いつか繋がりもしないガラクタ抱えて現場に行くつもりか!?」ブルーブルー・ビリジアン
久野里澪から、日本にいるので面を貸せと電話があったのは、二〇一七年の暑い盛りの朝だった。
CHAOS;CHILD 久野里澪 神成×久野里 神成岳志青い首輪をいつ外す
二〇一八年の六月上旬、渋谷のビアガーデン。
CHAOS;CHILD 久野里澪 神成×久野里 神成岳志
神成は『パリピ』や『陽キャ』、『リア充』などの表現を他人に用いたことはないが、周囲の客席は他にどう呼んだらいいか分からない人種ばかりだった。4分の1の純情なビターショコラ
神成岳志が紙袋を提げて信用調査会社フリージアを訪れたとき、時刻はもう2月の15日近くになっていた。けれど不定休のフリージアは、よく言う平日9時-5時では閉まらない。
CHAOS;CHILD 久野里澪 神成×久野里 神成岳志ポケットいっぱいの意地っ張りキャンディ
3月13日も、もうすぐ終わり。神成岳志は早く帰って眠りたい。
CHAOS;CHILD 久野里澪 神成×久野里 神成岳志
フリージアのローテーブルにブルーがかった透明な小瓶をどんと置いたのだって、義務みたいなもので。名前を呼んで
「『赤紙』」
CHAOS;CHILD 久野里澪 神成×久野里 神成岳志
「『密葬』」
「『羨み』」
「『民間企業』」
どうして個室で、久野里澪と向かい合って、真顔でしりとりをかましているのか。謎だ。澪標
「映画を――観たよ」
CHAOS;CHILD 久野里澪 神成岳志
ただそれだけのことを言うのに、舌が鉛のように重い。神成は床に視線を落とした。
「初めて会ったときに言ってた、ヴィンチャーの。レンタル屋で見つけて借りたんだ」青すぎたシトラス
「……俺もしかして今まさに、流行の『壁ドン』ってやつされてる?」
CHAOS;CHILD 久野里澪 宮代拓留 神成×久野里 神成岳志
「これは派生形の『股ドン』だ、情報は正しく掴めよ。あと壁ドンは今もう然程流行ってない」盾を守る乙女たち
「神成岳志の容態は、死んでないのなら二の次だ。――撃った奴はもう捕まっているんだろうな?」
CHAOS;CHILD 久野里澪 神成×久野里 神成岳志
「まだ、らしいです……」反逆シンデレラ
『ねえ澪、お願いったら』
CHAOS;CHILD Children's Collapse 久野里澪 牧瀬紅莉栖 神成×久野里 神成岳志
刹那的で打算的な人間関係ばかり構築してきた澪にとって、成程彼女――牧瀬紅莉栖との付き合いは、長いと言って差し支えなかった。恩義も一応感じている。少なくとも、日本では深夜と呼ばれる時間帯に、通話に応じてやる程度には。隠したことほど
「……日高くんは、あき穂ちゃんのこと嫌いなの?」
Robotics;Notes 大徳淳和 日高昴
淳和が尋ねたのにはとりたてて深い意味はなくて、更に言うなら明確な答えを期待していたわけでもなかった。僕らは白い鳥じゃない
「あれ、昴くん。どうしたのさ、こんなとこで」
Robotics;Notes 八汐海翔 日高昴
「……八汐先輩こそ」
風の気持ちいい三月の旧空港、昴は苦々しい思いで呟く。八汐海翔は、何をするでもなくそのコンクリートの平原に立っていた。言わないから、こうしていられる
高校生の頃、伊禮瑞榎はよく、その砂浜で波乗りをしていた。 サーフィン部がメインで使う場所とは違って、『最高の波』なんて滅多に来ない。よって人気もない。だからこそ伊禮はここを選ぶわけで、伊禮ならその気難しい波でも軽く手懐けてみせた。 長深田…
Robotics;Notes 伊禮瑞榎 朋友オセロ 長深田充彦ドレスアップは廃墟の為に
古郡こなが八汐海翔を呼び出したのは、彼の体調が随分快復した頃だった。
Robotics;Notes 八汐海翔 古郡こな 海翔×こな
あれほど嫌がっていた『発作』を乱発した後だから、かなり疲弊していたのだ。最後のこども
アラームが鳴り、八汐海翔は布団の上で目を覚ます。
Robotics;Notes Steins;Gate 八汐海翔 天王寺綯 岡部倫太郎 海翔×綯
ポケコンを確かめれば、今は2020年5月5日。部屋の中を見回す。1ヶ月以上もいれば場所自体には随分慣れたが、居心地は相変わらずよくない。不言実行修行中
大徳淳和と交際するにあたって、彼女の父親から提示された『空手の初段習得』という条件を海翔はまず真っ先に蹴った。
Robotics;Notes 八汐海翔 大徳淳和 海翔×淳和
愛がどうこうとかそういう精神論ではないのである。彼女の為なら命でも懸けるとか歯の浮く台詞は、(もし使うことがあるとして)ここぞというときに発するべきものであって、犬死にの言い訳に持ち出すものではない。心的外傷のブロークンノイズ
二〇〇九年、冬。渋谷地震が起こってからというもの、まゆりは元気がなかった。
Steins;Gate 岡部倫太郎 朋友オセロ 椎名まゆり
もちろんあの大災害で浮かれる方がどうかしているけれど、岡部倫太郎は別に『不謹慎厨』でもない。不知不会の二者面談
「どうせだらけているのなら、ホテルに戻ればいいではないか」
CHAOS;CHILD Steins;Gate 久野里澪 朋友オセロ 牧瀬紅莉栖 神成岳志
岡部倫太郎がドクぺを飲みながら呆れ顔で言った。自分こそこんな時間まで紅莉栖に付き合うことなどないのに、律儀なことだ。紅莉栖は右腕を緩慢に上げて、テレビを指差す。
「消して。『再来』のニュース、耳障りで」ロスト・アクトレス
2017年9月。渋谷にもまた、例の季節がやってくる。
CHAOS;CHILD CHAOS;HEAD 咲畑梨深 拓巳×梨深 楠優愛 神成×久野里 神成岳志 西條拓巳
神成は久野里を、拓巳拓巳は梨深を……二人の男は楠優愛の協力を受けながら、消えた女たちの足取りを追う。楽園追放 ―Children’s AnotherEden―
宮代拓留は渋谷に帰ってきた。久野里澪も。
CHAOS;CHILD Children's Collapse Children's Revive 久野里澪 宮代拓留 拓留×久野里 神成岳志
目的もない人生だが、それでいい。何事もない日常を望んでいた。望んでいると信じていた。あの男が再び現れた、ある秋の日まで。
罪に果ては、罰に終わりはあるのだろうか。彼らは自身にまだ問うている。美しい背中
「連れていってよ」
Robotics;Notes Steins;Gate 八汐海翔 天王寺綯 岡部倫太郎 海翔×綯
海翔のその言葉に、天王寺綯は少しだけ眉尻を下げて笑った。海翔も眉を寄せながら、口許だけで笑い返す。
「俺も東京に、連れていって。いいよね」伝えない言葉
頭脳では彼女に勝てない。恋では彼氏に勝てない。久野里澪は毎日どこか不機嫌。
CHAOS;CHILD Children's Collapse 久野里×紅莉栖 久野里澪 牧瀬紅莉栖
紅莉栖の幸せを願いつつ、やっぱりちょっとは構ってほしい。そんな片想いGL短編集。気化する絶望
新聞部の部室前。ドアのガラススリットから光が漏れており、見回り途中の和久井修一はため息をついた。ここの部員は本当に面倒な生徒しかいない。「誰だーい、こんな時間まで居残ってるのは。下校時間はとっくに過ぎているよ」 いかにも模範的な教師らしい…
和久井修一ここはもう俺たちのいる場所じゃない
大晦日の夜、神成岳志は電気もつけずに他人の部屋の番をしていた。
CHAOS;CHILD Children's Revive 神成岳志
嘘みたいだ。あの女が、久野里澪が、もうこの国のどこにもいないなんて。聞かせてくれ、この全き現実の話を
「うなされていたな」
CHAOS;CHILD 久野里澪 神成岳志
「らしいな。どんな夢だったか内容も忘れたっていうのに」
「忘れられる悪夢の方が幸運なぐらいだろう」
「そうかな。……そうかもな」