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雫集め

彼女がいつから白夜にいたのか、タクミは覚えていない。
生まれてはいたはずなのだが、もの心つくほど大きくはなかった。ともかくも彼女はいつも、遠慮がちにタクミの家族の傍にいた。

罪紅に水括る

「いいお天気だね! 狐の嫁入りなんて言葉はきっとヒトの考えた冗談だよ」
「ピエリは人なのよ! お嫁入りするのはニシキじゃないんだから、雨が降ってなくて当然なの!」

綺羅星の姫君

「ねぇオボロ。お式の衣装はこの間、サイズ測ってもらって布も選んだよね? 今度は何を選ぶの?」
闘いが終わり、真の平和へ歩き出した白夜王国と暗夜王国。その架け橋として、もうすぐエリーゼは白夜国王リョウマに嫁ぐ。

リンドウの花が枯れる前には

「ねぇ少しは下心もあったのよ、あなたのもとに来ればあの子とも離れずに済むんじゃないかって。まさか透魔王国を再建させて、王様になるだなんて……ヒノカ王女もお嫁に行ってしまうし、ああつまらないわ」
白夜王妃カミラは、寝室の窓辺で聞こえよがしに嘆息した。

誰の背を見て

寝耳に水どころか寝所に火矢を放たれたようだった。
「サクラ、マークス王子。タクミとエリーゼ王女は何も知らない。我々にそうしたように、二人にも自分たちで説明をしてやれ」
「は、い。……リョウマ兄様」

お味はいかが

「そりゃあマークス様が悪いですよ」
思案するマークスに、ラズワルドが頬杖をつきながら言った。
「完全に作戦ミスですよ。マークス様って本当に根っからのオウジサマですよねー」