もう名前も呼べない貴方へ
あの人はエリンシアの人生に不意に現れて、同じように不意に消えてしまった。
一度もその言葉をくれることのないまま。きっと、エリンシアがどの季節に生まれたのかさえ、彼は把握していない。
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残照
エリンシアが上がっていくと、アイクは城の屋上の弓狭間から、遠い空を見ていた。
「あんたと初めて会ったのも陽暮れ時だった。ドレスも夕焼けで染めたみたいな色に見えたな」
「――夕焼けなんて、なんだかとても寂しいみたい。闇を切り裂く、力強い夜明けの方が、きっと皆も頼もしいでしょう」
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幾百の初恋
天馬は、純白の翼を畳みながら静かに降り立った。リュシオンは天馬よりも白い羽でその許へ近寄った。
「タニスか」
「お久しゅうございます、リュシオン王子」
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朽ちない約束
世界が色を取り戻した日。ヨファは自らの髪にも似た、鮮やかな原っぱを眺めていた。
少女がその傍らに立ったときにも、特に顔を上げずに。
「ヨファ、女神様が一人に戻ってからわたしのこと避けてる」
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エインヘリャルの祈り
「ヨファ、本当に一人でいいの? 大丈夫なの?」
ミストが名を呼びながら駆け寄ってくる。寒さのせいで、息は白く弾んでいた。
いつもは煩わしかった子供扱いが、今はやけに微笑ましく感じる。
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気付いたらそこに花が揺れてた
リィレがそれを持ってきたのは、女神との戦いから一月を経た頃だった。オレは執務室で仕事をしていた。既に勤務時間外なので、他には誰もいない。
この静けさにも慣れた。キサが退勤前に淹れてくれた茶を啜りながら、譲位関係の書類に目を走らせる。
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ぼくのてづくり
「朝陽の、ばかやろー」
全てが目覚める朝の道を、覚束ない足取りで歩いている。
動かしどおしでだるい右腕、開けていることも困難な色違いの瞳……仕事を終えて寝に帰る、朝。
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きみのてづくり
「ライ隊長、私、隊長の為にお弁当作ってきたんですぅー!!」
「べ……べんと?」
ライは間の抜けた声で呟き、リィレの持つ籐の籠を指差す。
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水幻の色
一面の海原はガリアからベグニオンへ向かった船旅を思い出させた。
潮風の匂いだとてそう違いはないのに、この場所は女神の作り賜うた土地とは遠く切り離された『異界』なのだそうだ。波に揺れる足下はどこにもまして頼りない。
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大地に満ちる蒼穹よ気付け
女神との戦いからしばし時が経ち、各国が落ち着きを取り戻した頃、カイネギス王は正式に禅譲を表明された。
今や立派に成長したスクリミルの即位に反対する声もなく、現在ガリアは国を挙げて式典の準備を行っていた。我々軍人も例外ではない。
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汝は我らを導く者ぞ
「……不満そうだな?」
レテが呼びかけると、アイクは難しい顔で振り向いた。
「不満なんじゃない。腑に落ちない。何で俺なんだ?」
「ライにも言われたのだろう?ラグズとベオクが組む時点で、将軍はお前しかいないのだと」
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その国の翼
緑の髪の少女が、眩しそうに天を見上げていた。ベグニオン王宮に留まっている彼女は、雇った傭兵団の留守中、神使に呼ばれていないときはああして中庭で空を見ている。
「どうかなさいまして? エリンシア姫」
「シグルーン様」
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