高葉ヶ丘

文体練習(90~99)

『文体練習』レーモン・クノー 著・朝比奈浩治 訳 バスの中で起こった出来事を99通りの文体で書いた本。 この本の真似をして、(ほぼ)毎日一題文体の練習……というより実験をしていく企画です。 91 表現不能  2023/02/23 …

文体練習(81~90)

『文体練習』レーモン・クノー 著・朝比奈浩治 訳 バスの中で起こった出来事を99通りの文体で書いた本。 この本の真似をして、(ほぼ)毎日一題文体の練習……というより実験をしていく企画です。 81 ちんぷん漢文  2023/02/0…

文体練習(71~80)

『文体練習』レーモン・クノー 著・朝比奈浩治 訳 バスの中で起こった出来事を99通りの文体で書いた本。 この本の真似をして、(ほぼ)毎日一題文体の練習……というより実験をしていく企画です。 71 語頭音付加  2023/01/17…

春がもうひとつあったとて

「松原さんって誰?」
 桜原家のポストに入っていた、見知らぬ差出人からの手紙。心穏やかでない椎弥は皓汰を問い詰めるが、皓汰はどこか浮ついた様子で返事を書こうとしていた。
 ――皓汰はいつも自分を表現する言葉には不自由している。椎弥と共有できるかたちにはならないし、してもくれない――

覚えていなくていいから

ビルとビルの間に敷かれた大通りを歩いていく。どことなく高校の通学路に似た景色。
三年経ってできることも行ける場所も増えて、それでもまだ二人で歩いている。為一は浮かれた声で怜二の顔を覗き込んでくる。
「で、レイジくん。今日はどこ連れてってくれんの?」

留年旅行

マンションのエントランスにゴルフに行きそうなオッサンがいると思ったら彩人だった。
「おはよ、あっちゃん。今日も十八歳とは思えない格好してるね。またお父さんのクローゼットから勝手に服借りたの?」
「そういう慶ちゃんは今日もまるで小学生だな。その原色のセーター、レゴブロックみたいで似合ってるぞ」

空論を廻す

声高に配慮を求めてトラブルになってしまう生徒がいる、と皓汰にこぼしたのは、一月二日の午後だった。
元旦に実家に戻って翌日の義実家。今に比べればおおらかに帰省ができた頃だ。
侑志と皓汰のいる和室には火鉢。炭が爆ぜていた。部屋の隅まで届ききらない丸いぬくもりから外れないよう二人で身を丸めていた。