「お兄ちゃん絶対合挌!」
講堂の床にお守りが落ちていた。
俺と同じ受験生のものだろうか、拾ってあげた方がいいよな……。
『お兄ちゃん絶対合挌!』
短編 高葉ヶ丘300ss,永田慶太郎,高葉ヶ丘
掬われない
セーラーの襟を茶色のポニーテールが何度もかすめる。
藤谷の横顔は今日も夕陽に縁どられている。
短編 高葉ヶ丘300ss,桜原太陽,高葉ヶ丘
虹よりも長く
学活の後、校舎を出ると虹は消えかけていた。あんなに大きかったのに……怜二は水たまりを長ぐつでけっとばす。
タイチは空に手をのばしランドセルに何かつめている。
短編 高葉ヶ丘300ss,八名川為一,早瀬怜二,高葉ヶ丘
生き止まり
焼香の順番を待ちながら、僕は教え子の遺影をぼうと見つめた。
卒業してから二ヶ月しか経っていないのに、眼鏡も髪形も変えた君は随分と大人びて見えた。
壮花 短編300ss,壮花,新田侑志
黒が劣勢
弱モードでも夜中の換気扇はよく響いて、気遣い虚しく妻が起きてきてしまった。
「禁煙って約束したのに。私もこの子もどうでもいいんだね」
妻はまだぺちゃんこのお腹を撫でながら恨みがましく言う。
短編 高葉ヶ丘300ss,早瀬琉千花,永田慶太郎,高葉ヶ丘
運想
壁にかかる60インチ4Kテレビ。為一は新居のフローリングに座って真っ黒な画面を眺めている。
結婚しよう――たった一言で二年に及んだ同棲は終わった。三つ上の彼女を喜ばせるはずだった幻想のために。
短編 高葉ヶ丘300ss,八名川為一,高葉ヶ丘
眠罪
眠るように息を引き取る、とはよく聞くが、男は死ぬように眠りにつく。意識を失う際に喉を掻きむしる。
短編 高葉ヶ丘300ss,富島彩人,高葉ヶ丘