クリミア解放までをアイクとレテ、それぞれの視点で描きます。
片側だけでも理解に支障はありませんが、併せてお読みいただくとより分かりやすい構成になっております。
捏造設定・他ユニットからアイクやレテへの片思い描写が含まれますので、ご了承のうえお楽しみください。
序 ある少年の記憶
これは、太陽に焦がれた少年の物語。
第一章 開戦
追いかけた背を喪い、壮絶な戦いを強いられるアイク。
迫りくる絶望を切り裂いたのは、陽光のごとき橙の毛色を持った猫だった。
空は暗く。雨は容赦なく身体を叩き、その熱を奪っているというのに。
――長い夜が、明けたような気がしていた。第二章 渡海
ガリアの獣牙族と対等な関係を築こうとするアイクだが、ラグズとベオクの確執は彼の考える以上に深刻だった。
特にレテはベオクへの嫌悪感を露わにし、アイクの差し出した手を拒絶する。
だったら、俺が一人目になろう。あんたの中のベオクが全て、真っ黒に塗り潰されているのなら。
あんたにとって一人目のベオクに、新しく、俺がなろう。第三章 貴族とラグズ
無事ベグニオン帝国に到着した一向。
アイクはベオク・ラグズ間の差別感情の他に、身分社会の複雑さにも悩まされる。
まったくラグズとベオクというやつは複雑で、面倒だ。
こんなにあたたかいのに、どうしてそれだけでは解り合えないのだろう。第四章 侵攻
父とメダリオンの秘密を知り苦悩するアイク。
だが戦乱のうねりは個人の感傷を待ってはくれない。
誰のものでもない己の足で紅き雪を踏破し、彼らはついにデイン王都へと至る。第五章 祖国へ
遺臣団との合流を果たし、破竹の勢いで進撃を続けるクリミア解放軍。
その中でアイクは、ここまで隣で戦ってきたレテの存在が、自分にとってどれだけ大きいものであるかを自覚する。
「傍にいてくれ。国とか、軍とかは関係ない。これは俺のわがままだ」第六章 太陽と手を携えて
アイクはただ、あの暁の色が忘れられなくて。雨の闇夜を駆け抜けた光の色に憧れて。
どんな悪夢を切り裂くときも、傍らにあの色があれと願った。
俺の世界を救ってくれたのは、他でもないあんただから。俺は生きている限り、この腕を伸ばし続けるから。
だから、頼む。
「俺と手を携えて、生きてくれ」結 森の賢者と新たなる風
もう孤独に凍てつくことはない。あたたかい、ガリアの春。
外伝 硝子の時計の砂の色
お前たちと命を懸けて守った世界を、今度はオレたちが、きっと繋いでいこう。
この美しい色をした、オレたちの愛おしい世界を。
序 ある少女の記憶
これは、海に恋した少女の物語。
第一章 そして太陽が目覚めるように
ガリアにやってきた、祖国を焼け出された傭兵団。
レテは親ベオク政策に懐疑的ながら、王の命で彼らの救出に向かう。
そこで出逢った少年の、海のような蒼色と炎のような熱が宿る瞳。
彼はレテから目を逸らそうとしなかった。レテも逸らすことが出来なかった。
視線が交錯するその空間だけ、雨が止んでいるように見えた。第二章 光が風に舞い遊び
アイクたちの生き方に触れ、ベオクへの憎と彼らへの信頼の間で揺れるレテ。
そんな中、想定外の事態でよき調整役だったライと分断され、レテは自分の責任だけでベオクたちと向き合っていくことを強いられる。
どうしてお前はここに居てくれないんだろう、ライ。『疑うな。信じるな。動じるな』――私には無理だ。私には、難しすぎる。
誰にもこぼせない弱音を見抜いたのは、あの少年の蒼い瞳だった。第三章 命の貴賤
ベグニオンで出逢った虎の青年・ムワリム。
自らの意思でベオクに従い、他国のラグズを突き放す物言いをする彼に、獣牙の誇りを疑ったことのなかったレテは戸惑いを隠せない。
アイクの強さを知った。ジルの勇気を見た。自分もそんな風に、ムワリムの痛みに歩み寄れるだろうか。第四章 雪に紅
クリミア解放の機運が高まる中、デイン領を進軍していくレテたちは戦勝国と敗戦国の現実を見る。
『正義』の是非、戦いの意義、倫理と権利――どんな血に塗れても、もう足を止めることはできない。
レテの気がかりは他にもあった。人知れず衰弱していくアイクに、少しでも何かしてやりたい。
泣いてもいいと言ってやれたら……届かない願いは音もなく降り積もる。第五章 春風とともに
いよいよクリミア解放の本懐を遂げようとするアイクたち。
ライとの合流も果たし、レテたちガリア兵のお役目も終わりが見えてきた。
それは同時にアイクとの別れを意味してもいる。レテたちには追いつけない速度で大人になっていく、少年との。
「私はお前を失いたくない。立場以上に……ひととして。私として」
つないでいるはずの手は、途方もなく遠い。第六章 こんな空の下でさえ
時の流れが違っても、お前だけが老いて動けなくなっても、私は最期までお前と共に在ろう。
終のときまでその手を握ることを誓おう。
迷うことなく世界に叫ぶ。
――私は、お前を愛している。結 海と太陽の帰還
緩やかな滅びに向けて、密やかに生命の灯火は続く。
外伝 安らぎの大地
「縛ってくれていいんだよ。オレはどこにも行かないから。死ぬまでお前の傍にいられるように、オレを縛りつけておいてくれ」
残ることを選んだ者たちの、強く穏やかな決意。