序 ある少女の記憶

SIDE Rethe

 

 彼女の思い出の中で、彼はいつもバンダナを風に流して、水平線の向こうを見ていた。

 強い意志の宿る瞳は蒼色。深い深い水の色。
 悲しみも、痛みも、喜びも、光も闇も、全てを飲み込んで凪いだ海の色。
 何もかもを受け入れて、なお輝くことを選んだ波間。

 広すぎて、大きすぎて、彼女は怯んだ。
 触れたい気持ちを押し殺した。

 それでも、潮風に誘われるように。
 彼女は何度も、何度でもその浜辺に佇んだ。
 見ていることが許されるなら、見つめ続けたいと願った。

 声にならない想いを叫ぶ。

 ――これは、海に恋した少女の物語。

 

To SIDE Ike

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