タクミ

弦のない弓

「タクミ様がね、周囲がどんどんお相手を見つけているっていうのに、浮いたお噂の一つもないの」
母・オボロの頼みで、エポニーヌはタクミに想い人がいるかどうか確かめることになる。そしてタクミの思いがけない気持ちに触れ、エポニーヌはある決心をする。

雫集め

彼女がいつから白夜にいたのか、タクミは覚えていない。
生まれてはいたはずなのだが、もの心つくほど大きくはなかった。ともかくも彼女はいつも、遠慮がちにタクミの家族の傍にいた。

誰の背を見て

寝耳に水どころか寝所に火矢を放たれたようだった。
「サクラ、マークス王子。タクミとエリーゼ王女は何も知らない。我々にそうしたように、二人にも自分たちで説明をしてやれ」
「は、い。……リョウマ兄様」

彼の名前は蒼炎の

アイクはそれなりにそれなりの経験をして、テリウス大陸を旅立ったはずだった。
女神の力で他の大陸を失い、海にぽっかりと浮かぶ最後の島々。それにさえ、知らなかった砂漠の向こうの国が存在したように、この遠い世界も傭兵砦で剣を振るうだけだった幼いアイクには想像もできなかった。