蒼炎長編_レテ

第五章 春風とともに

いよいよクリミア解放の本懐を遂げようとするアイクたち。
ライとの合流も果たし、レテたちガリア兵のお役目も終わりが見えてきた。
それは同時にアイクとの別れを意味してもいる。レテたちには追いつけない速度で大人になっていく、少年との。
「私はお前を失いたくない。立場以上に……ひととして。私として」
つないでいるはずの手は、途方もなく遠い。

第四章 雪に紅

クリミア解放の機運が高まる中、デイン領を進軍していくレテたちは戦勝国と敗戦国の現実を見る。
『正義』の是非、戦いの意義、倫理と権利――どんな血に塗れても、もう足を止めることはできない。
レテの気がかりは他にもあった。人知れず衰弱していくアイクに、少しでも何かしてやりたい。
泣いてもいいと言ってやれたら……届かない願いは音もなく降り積もる。

第三章 命の貴賤

ベグニオンで出逢った虎の青年・ムワリム。
自らの意思でベオクに従い、他国のラグズを突き放す物言いをする彼に、獣牙の誇りを疑ったことのなかったレテは戸惑いを隠せない。
アイクの強さを知った。ジルの勇気を見た。自分もそんな風に、ムワリムの痛みに歩み寄れるだろうか。

第二章 光が風に舞い遊び

アイクたちの生き方に触れ、ベオクへの憎と彼らへの信頼の間で揺れるレテ。
そんな中、想定外の事態でよき調整役だったライと分断され、レテは自分の責任だけでベオクたちと向き合っていくことを強いられる。
どうしてお前はここに居てくれないんだろう、ライ。『疑うな。信じるな。動じるな』――私には無理だ。私には、難しすぎる。
誰にもこぼせない弱音を見抜いたのは、あの少年の蒼い瞳だった。

第一章 そして太陽が目覚めるように

ガリアにやってきた、祖国を焼け出された傭兵団。
レテは親ベオク政策に懐疑的ながら、王の命で彼らの救出に向かう。
そこで出逢った少年の、海のような蒼色と炎のような熱が宿る瞳。
彼はレテから目を逸らそうとしなかった。レテも逸らすことが出来なかった。
視線が交錯するその空間だけ、雨が止んでいるように見えた。