新田侑志

空論を廻す

声高に配慮を求めてトラブルになってしまう生徒がいる、と皓汰にこぼしたのは、一月二日の午後だった。
元旦に実家に戻って翌日の義実家。今に比べればおおらかに帰省ができた頃だ。
侑志と皓汰のいる和室には火鉢。炭が爆ぜていた。部屋の隅まで届ききらない丸いぬくもりから外れないよう二人で身を丸めていた。

ピアノの顔

あった。椅子の座面からお気に入りのペンを拾い上げ、琉千花はほっと息をついた。
振り返って授業後の音楽室を見回す。空っぽだ。これから昼休みだが、高葉ヶ丘の軽音部は時間外練習をするほど熱心ではないようだった。

生き止まり

焼香の順番を待ちながら、僕は教え子の遺影をぼうと見つめた。
卒業してから二ヶ月しか経っていないのに、眼鏡も髪形も変えた君は随分と大人びて見えた。

写真

「朔夜さんって写真撮らないよね」
君はスマートフォンを私に向けて呟いた。陽光にきらめく海から視線を外し、私はレンズではなく君の目を見る。