学活の後、校舎を出ると虹は消えかけていた。あんなに大きかったのに……怜二は水たまりを長ぐつでけっとばす。
タイチは空に手をのばしランドセルに何かつめている。
「にじ、おかあさんに見せるの」
タイチはマジメだった。怜二は八名川のおばさんを思い出す。
きれいだけど、タイチが泣いていたってちっとも来てくれない人だ。
怜二はぐっとおなかに力を入れた。
「それよりホタルに見せようぜ!」
走る。タイチがあわてて追いかけてくる。
「ネコちゃんってにじ好き?」
「しらねー!」
ひざに乗ったホタルをなでるとき、タイチはにこにこゴキゲンだ。
おばさんのいる家にもあの笑顔を持って帰らせたい。虹よりも長く、くっきりと残る笑顔を。