Leo/need

Nameless

「ねぇルカ。私は誰だと思う?」
問いかけると、ルカはベースの手入れを中断して私を見た。
「いきなりどうしたの、ミク」
「一歌が私のこと、『ミク』って呼ぶのがなんだかおかしいなと思って」

アルペジオ

――なんだ、今日は誰もいないのか。志歩は軽く落胆して足を速める。
すると、志歩の二倍は早足でピアノに向かっていく人影があった。
彼は乱暴な手つきで椅子を引く。大股でどっかと座って両手を鍵盤に叩きつける。勢い任せの騒音は、一秒と待たず整った旋律になった。

標星

病院の廊下は中学校の廊下よりも広く長く冴え渡っていた。
一点の汚れも許さない冷たさに気後れしながら、一歌は財布を握りしめる。
たった十数メートルを躊躇させるような潔癖な箱に、どうして咲希ばかり閉じ込められてしまうのかと考えるだけで俯きがちになる。