序 ある少年の記憶

 

 彼の記憶の中で、彼女はいつも緑のリボンを風に流し、地平線の向こうを見ていた。

 迷いのない瞳は紫。揺れる癖毛は橙。

 夕焼けのようだと言う者もいたけれど、彼は彼女を朝焼けのようだと思っていた。
 夜明けの空の色。闇を払い世界を照らす太陽の色。

 とてもとても遠かった。
 それでも構わないほど惹かれた。

 手を伸ばす。何度も、何度でも。
 その傍らに在りたいと、彼はそれだけを叫び続けた。

 ――これは太陽に焦がれた少年の物語。

 

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