4/19 招文堂WS・文芸意見交換会 感想メモ

2023/04/19 Twitterスペースにて
運営:招文堂さん(@shobundojinshi
主宰:花村渺さん(@b_yo22
で行われた、文芸作品の意見交換会に関するメモです。

 

 

多聞さん 『午後一時上演開始予定』

【よいと感じたところ】
・上演前独特の落ち着かない空気がよく伝わってきた
・主人公以外誰も出てこないのに500字以上間が持って、ひとつの作品として成立している表現力
・引っかかることなく最後まで読める。言葉選び・語順など細かいところまで配慮が行き届いた、世界観を邪魔しない文章の巧みさはさすが

【気になったところ】
・舞台を見に来たはずなのに、舞台上より周囲の他人について先に描写されているところが気になる。観劇ならではの、舞台と自分が一対一になるような感覚(錯覚)に絞って書いていってもよかったかも
・不在の輪郭をもっと丁寧に描いていくと、誰もいない舞台の存在感がよりしっかりしたと思う

 

 

山田・C・ストロング中性脂肪さん 『大先生はいつも不在』


【よいと感じたところ】

・絵本のようなかわいらしさで、微笑ましい読後感だった
・「先生」のコンプレックスや「カヤネ」との関係など、キャラクターの個性も描かれていてよかった
・先生の「カヤネ」は「ちゅう」なのに本物のカヤネはラフな言葉遣いなのがかわいい

【気になったところ】
・記号の後が一字空けしていない
・若い女性のことを指しているのはわかるが、既婚者で「娘」という言葉はあまりしっくりこないなと思った
・字数も少ないので、場面転換は挟まない方がテンポがいいかもしれない
「娘は夫の病状を説明した。ねずみはそれを聞くと、藤(「籐」の間違い?)のバスケットを手渡し~」など、文章で時間経過を表現した方が、それまでにできあがった流れを切らずに済む気がする

 

 

花村渺さん 『残香』

【よいと感じたところ】
・美しさと不気味さの、あと一歩間違えば空気が崩れてしまいそうな絶妙なバランス
・この少ない字数で、舞台を動かしても忙しく思わせない滑らかな話運び
・作中にもあるとおり「じっさいのあじさいは香りのないものがほとんど」なのに、読んでいるうち鼻の奥に知らないはずのあじさいの香りを感じた
・携帯電話なのに、履歴を使わずに毎回番号を打ち込んでいるのが繰り返しの狂気を感じさせる

【気になったところ】
・「音よりさきに目ざめないことは一度もなく」
 二重否定を使うほど作品の中で重要な情報ではない気がするので、普通に肯定文を使った方が引っかかりが少ないのでは? と感じた
・「ぬりむらのようなうっすらとしたおうとつがわかるだけだった」
 直前の「沈み」の送り仮名も含めると29字ひらがなが続くので、さすがに読みづらさを感じた
 ちょうど改ページにかかって「沈みぬり」で切れていたのもあり、一瞬「沈みぬる」の連用形かと思ってしまった
 とはいえ、一般的に漢字で表現する言葉をひらいていくのは、作品を構成するうえで欠かすことのできない花村さんの個性なので、安易に変換するのも違う気はする

 

 

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氷上が提出したのは『スノッブの鏡像』でした。

ありがとうございました!