焼香の順番を待ちながら、僕は教え子の遺影をぼうと見つめた。
卒業してから二ヶ月しか経っていないのに、眼鏡も髪形も変えた君は随分と大人びて見えた。
『まだ親父にも言ってないんだから、先生だけだよ』
映像研のある高校に行きたいと打ち明けてくれた。少しでも早くひとり親を安心させたいと推薦で受かり、大きな夢を抱いて高校生になったはずの君は、道半ばでこの世を去った。ご遺族よりもメディアが饒舌になる類の事情によって。お棺の窓が開けられることのない姿で。
抹香に触れ、僕の半分も生きられなかった命を想う。
もし迷いがあるならまた会いにおいで。
もう一度進路面談をやり直そう。今度はゴールまで、君が幸せに歩めるように。