人よ、其の騎士たれ。乙女よ、其の贄たれ。娘よ、其の太陽たれ。
「君はただの一兵士じゃない。僕の大切な家族だ」
「もったいなき御言葉です。平素ならば謹んで頂戴いたしましょうが……」
ナンナはリーフの眼光を真正面から弾き返した。
「これは謙遜でも遠慮でもございません――諫言です。前線にお戻りください、リーフ様」
FE ユグドラルナンナ,フィン,リーフ,聖戦の系譜
「手を貸して」(台詞お題)
戦場の只中で、少女は声を張り上げる。
リーフたちレンスター勢が、セリス率いる解放軍と合流して、まだ日も浅い。
にもかかわらず、ナンナは早くも衛生兵を率いる一隊長としての任にあたっていた。
FE ユグドラルナンナ,リーフ,聖戦の系譜
覚悟の色
「ダメだぁ、見つからないよナンナ」
リーフ少年が愚痴をこぼすと、いくつか年下のあどけない少女・ナンナが、大人ぶった口調で返す。
「だってリーフさま、下ばかり見てらっしゃるのですもの」
「キノコは地面の暗いところに生えるんでしょう?」
「木のみきだって、生えますわ。……ほら、見つけた」
FE ユグドラルトラキア776,ナンナ,リーフ
王でなかったもの
ナンナがあからさまに不機嫌になった理由には、フィンも心当たりがある。
「分別のある娘で助かっている」
「当たり前でしょう。リーフ様の御耳に入れるほど、私軽率じゃありません」
FE ユグドラルトラキア776,ナンナ,フィン
もう名前も呼べない貴方へ
あの人はエリンシアの人生に不意に現れて、同じように不意に消えてしまった。
一度もその言葉をくれることのないまま。きっと、エリンシアがどの季節に生まれたのかさえ、彼は把握していない。
FE テリウスアイク,アイク×エリンシア,エリンシア,暁の女神
残照
エリンシアが上がっていくと、アイクは城の屋上の弓狭間から、遠い空を見ていた。
「あんたと初めて会ったのも陽暮れ時だった。ドレスも夕焼けで染めたみたいな色に見えたな」
「――夕焼けなんて、なんだかとても寂しいみたい。闇を切り裂く、力強い夜明けの方が、きっと皆も頼もしいでしょう」
FE テリウスアイク,アイク×エリンシア,エリンシア,暁の女神
幾百の初恋
天馬は、純白の翼を畳みながら静かに降り立った。リュシオンは天馬よりも白い羽でその許へ近寄った。
「タニスか」
「お久しゅうございます、リュシオン王子」
FE テリウスタニス,リュシオン,リュシオン×タニス,暁の女神
朽ちない約束
世界が色を取り戻した日。ヨファは自らの髪にも似た、鮮やかな原っぱを眺めていた。
少女がその傍らに立ったときにも、特に顔を上げずに。
「ヨファ、女神様が一人に戻ってからわたしのこと避けてる」
FE テリウスミスト,ヨファ,ヨファ×ミスト,暁の女神
エインヘリャルの祈り
「ヨファ、本当に一人でいいの? 大丈夫なの?」
ミストが名を呼びながら駆け寄ってくる。寒さのせいで、息は白く弾んでいた。
いつもは煩わしかった子供扱いが、今はやけに微笑ましく感じる。
FE テリウスミスト,ヨファ,ヨファ×ミスト,暁の女神
気付いたらそこに花が揺れてた
リィレがそれを持ってきたのは、女神との戦いから一月を経た頃だった。オレは執務室で仕事をしていた。既に勤務時間外なので、他には誰もいない。
この静けさにも慣れた。キサが退勤前に淹れてくれた茶を啜りながら、譲位関係の書類に目を走らせる。
FE テリウスライ,ライ×リィレ,リィレ,暁の女神
ぼくのてづくり
「朝陽の、ばかやろー」
全てが目覚める朝の道を、覚束ない足取りで歩いている。
動かしどおしでだるい右腕、開けていることも困難な色違いの瞳……仕事を終えて寝に帰る、朝。
FE テリウスライ,ライ×リィレ,リィレ,暁の女神
きみのてづくり
「ライ隊長、私、隊長の為にお弁当作ってきたんですぅー!!」
「べ……べんと?」
ライは間の抜けた声で呟き、リィレの持つ籐の籠を指差す。
FE テリウスライ,ライ×リィレ,リィレ,暁の女神