溶ける泡沫
『今夜少し、お邪魔しても構わないかな』
神成岳志が、青葉寮の固定電話に連絡をしてきたのは、6月9日の6時過ぎだった。
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2017年5月21日
独房での接見なら何度か経験したが、宮代拓留は今日初めて、面会室に踏み入った。
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香雪蘭の根元で
「は? 誕生日? 誰の」
「私だよ。肉体的にそうなった時間は知らないが、書類上は本日午前0時に満19歳になった」
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針はなくとも時計は動く
「知ってますか、百瀬さん。コーヒーを飲んでるとね、吐いても口がまずくならないんですよ」
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子供はまだ微睡の中
この階段を上るときは、いつだって冒険心と引け目でドキドキした。
堂々と前を行く背中がないだけで、こんなにも心持が違うものかと、神成はぼんやり考える。
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きみはみんなのおにいさん
二〇一五年。神成岳志は、渋谷警察署の眼前に長々と渡る歩道橋の上で、漫然と渋谷の夜景を眺めていた。
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彼の足跡の追随
「本気で言っているのか?」
上司の責めるような口調に、神成岳志はなるべく人好きのする笑顔で頷いた。
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本音と嘘と裏切りと親愛
「これ、誰だか心当たりは?」
「先輩!? うっわ、若……! 昔から百瀬さんと知り合いって本当だったんだ」
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彼らのお話の始まりの集まり
高校生になっても、年度初めの自己紹介なんて退屈なものだった。
伊藤真二は前から数列目の席であくびを噛み殺す。
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