CHAOS;CHILD

楽園追放 ―Children’s AnotherEden―

宮代拓留は渋谷に帰ってきた。久野里澪も。
目的もない人生だが、それでいい。何事もない日常を望んでいた。望んでいると信じていた。あの男が再び現れた、ある秋の日まで。
罪に果ては、罰に終わりはあるのだろうか。彼らは自身にまだ問うている。

仮想彼岸のフローラルトリビュート

神成岳志は、黒いスーツに黒いネクタイで、その場所を歩いていた。
遮るもののない陽射し。石の照り返し。樒の緑。線香の匂い。腕の中には七本の白いキクを束ねた包み。

不知不会の二者面談

「どうせだらけているのなら、ホテルに戻ればいいではないか」
岡部倫太郎がドクぺを飲みながら呆れ顔で言った。自分こそこんな時間まで紅莉栖に付き合うことなどないのに、律儀なことだ。紅莉栖は右腕を緩慢に上げて、テレビを指差す。
「消して。『再来』のニュース、耳障りで」

澪標

「映画を――観たよ」
 ただそれだけのことを言うのに、舌が鉛のように重い。神成は床に視線を落とした。
「初めて会ったときに言ってた、ヴィンチャーの。レンタル屋で見つけて借りたんだ」