八汐海翔

仮想彼岸のフローラルトリビュート

神成岳志は、黒いスーツに黒いネクタイで、その場所を歩いていた。
遮るもののない陽射し。石の照り返し。樒の緑。線香の匂い。腕の中には七本の白いキクを束ねた包み。

不言実行修行中

大徳淳和と交際するにあたって、彼女の父親から提示された『空手の初段習得』という条件を海翔はまず真っ先に蹴った。
愛がどうこうとかそういう精神論ではないのである。彼女の為なら命でも懸けるとか歯の浮く台詞は、(もし使うことがあるとして)ここぞというときに発するべきものであって、犬死にの言い訳に持ち出すものではない。