鳩ヶ谷さんと青信号ナガクナール
鳩ヶ谷さんはいつも信号のボタンを殴るように押す。白杖を持ったピクトグラムの描かれた白い箱。交通弱者用押しボタン。
「いったい何が弱者だよなぁ、おい」
短編シリーズなし
白と青
「よろしくお願いします!」
ひんやりとした三和土に、圧縮された熱気と蝉の濁り声がまとめて押し入ってくる。青人が一〇三号室の玄関先で大きく頭を下げる。
今年中学生になったはずの甥は、正月に会ったときと全く変わらないように見えた。
「野球教えてほしいって具体的にどうしたいの」
短編シリーズなし,寄稿作品
スノッブの鏡像
わかるよ。気持ちいいもんな。
自分が選ぶ側だっていう錯覚の中にいるのも。徒党を組んで偉くなった気でいるのも。
安全圏からいつかの憂さを晴らすのも。劣等感を受け止めてくれそうな案山子を、知られる間もなく一方的に殴るのも。
短編シリーズなし
やさしくしたい
首吊り。ばらばら。串刺し。丸焦げ。
少女たちはいかにして死体となったか。
犯人探しも謎解きもない、乙女の秘密を紐とくだけの些細な物語。
短編シリーズなし,短編集