シリーズなし

白と青

「よろしくお願いします!」
 ひんやりとした三和土に、圧縮された熱気と蝉の濁り声がまとめて押し入ってくる。青人が一〇三号室の玄関先で大きく頭を下げる。
 今年中学生になったはずの甥は、正月に会ったときと全く変わらないように見えた。
「野球教えてほしいって具体的にどうしたいの」

スノッブの鏡像

わかるよ。気持ちいいもんな。
自分が選ぶ側だっていう錯覚の中にいるのも。徒党を組んで偉くなった気でいるのも。
安全圏からいつかの憂さを晴らすのも。劣等感を受け止めてくれそうな案山子を、知られる間もなく一方的に殴るのも。