仮想彼岸のフローラルトリビュート - 4/5

C区画

 この区画は、あまりに嗅ぎ慣れた空気で、逆に吐き気がした。

 名は刻まれているのに、中身は当分入ることのない墓石。
 中身はあるのに名を刻まれなかった墓石。
 これ以上箱へは入れてやれなかった遺灰。

 祈る少女たちの顔が。名が。事情が。あまりに鮮明に分かりすぎて。
 顔を伏せて、見ないようにして進むことしか、神成には出来ない。
 許してくれと乞うことさえ、彼女たちにとっては場違いな乱入でしかないのだから。