文体練習(21~30)

『文体練習』レーモン・クノー 著・朝比奈浩治 訳
 バスの中で起こった出来事を99通りの文体で書いた本。

 この本の真似をして、(ほぼ)毎日一題文体の練習……というより実験をしていく企画です。

 

21 区別  2022/10/24

 高葉ヶ丘高校(航行ではない)の校舎(何かが上手い人ではない)、朝の(浅野さんではない)進路指導室(シン・濾紙同質ではない)。
 一八四センチメートル(センチメンタルではない)の新田侑志が大学案内(退学になんない、ではない)を読んでいる(呼んでいるのではない)。
 ドア(どこでもではない)が開き(魚の干物ではない)、井沢徹平が入ってくる(ハイになっているのではない)。侑志を優等生(遊蕩性ではない)と茶化す(へそで茶を沸かすのではない)。
 井沢は警察官(自衛官ではない)採用(女性の細い腰ではない)試験(私見ではない)の過去問(イチャモンではない)を手に取る。
 侑志は、警官(月桂樹の冠ではない)を目指す(カタクチイワシなどを束ねた干物ではない)のかと訊く(キク科キク属の植物ではない)。
 井沢が、果ては(さては、ではない)お互い公務員(オカタイ公務員ではない)だなと笑う(洗ったのではない)。

【感想】
 最近の練習を引きずってしまっている感がある……(「17 合成語」「18 でもなく」「20 アナグラム」など)
 否定のバリエーションも、お手本みたいに「関係がない」「わけではない」などバリエーションを持たせればよかったなと思った。

 

22 語尾の類似  2022/10/25

 朝日照るある日、侑志が参る。
 主のおらぬ然る部屋で、明るい未来のために頑張る。飽きることなく、するする資料見る。
 井沢はいじわる、あてこする。
「警官になる?」
 侑志尋ねる。井沢答える。
「するといわゆる公務員」

【感想】
 最後、語尾「る」じゃねぇじゃねぇか! という話なのだが、リズムの楽しさを取ってしまった。
 あんまり実用的な文体ではないけど書いてて面白かった。

 

23 あらたまった手紙  2022/10/26

 謹啓 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 卒爾ながら、このたび新田侑志は大学受験の準備に伴い、進路指導室に赴く運びとなりました。
 つきましては、井沢徹平も同室を謹んで訪問いたします。
 ご多用中誠に恐縮ではございますが、ご臨席賜りますようよろしくお願い申し上げます。

                                          謹白

【感想】
 もっと『ファイアーエムブレムヒーローズ』のアシュみたいなお手本だったのだが、かなり簡略化してしまった。
 進路指導室に集まって何するんだよ……。

 

24 新刊のご案内  2022/10/27

 『Evergreen』『赤を囲う』の氷上涼季、最新作!
 高校二年生の秋を迎え、次の目標を具体的に検討し始めた侑志。
 そこに井沢が現れ、思いがけない行動をとり……!?
 二度と同じ春は来ない。俺たちは立ち止まれない。
 だからこそ、少しでも胸を張れる道を自ら選んで行けるように――。
 思春期のゆらぎを切り取った青春掌編。

【感想】
 お手本は出版社に紹介を求める手紙だったがちょっとずらした。
 好きだったり興味があったりするお題と、好きでなかったり思いつかないお題で、露骨に差が出てしまっているのが気になっている……。完璧を求めて止まってしまうよりはいいやという気持ち。

 

25 擬音  2022/10/28

 廊下の床が、キュッキュッキュッ。扉をガラガラ、進路指導室。大学案内、ペラペラペラ。
 バーンとドア開き、井沢がスタスタ。シュッと本取る、警察過去問。
 ポツポツお話、始業のキンコンまだまだ先。

【感想】
 このシチュエーション、動きが少ないんだよな……というのがよく分かる結果に。
 もっと個性的な擬音語とか使ってみたかったな。

 

26 論理的分析  2022/10/29

 高葉ヶ丘高校。
 進路指導室。
 高葉ヶ丘高校の進路指導室。これは場所である。
 朝。
 八時。
 頃。
 朝八時頃。これは時間である。
 侑志。
 大学案内。
 侑志は大学案内を読む。これは行動である。
 二年生。
 新田侑志。
 二年生の新田侑志。これは主人公である。
 井沢徹平。
 井沢徹平。これは副主人公である。
   。
   。
   。これは語り手である。
 台詞。
 台詞。
 台詞。劇中で発した言葉である。
 侑志の台詞。
 井沢の台詞。
 二者が双方向に発した台詞は会話になる。
 侑志の見ているもの。
 井沢が探しているもの。
 二人がつかもうとしているもの。これはすなわち未来である。

 
【感想】
 ほぼお手本ママだが、論理的でも分析でもなくただの繰り返しのような気がする。
 どことなくラーメンズのコントを思い出した。日本語学校的な。

 

27 念には念を  2022/11/01

 ある日の朝、新田侑志は高葉ヶ丘高校の進路指導室に行った。
 新田侑志は誰もいない高葉ヶ丘高校の進路指導室で大学案内を開き、教育学部のある大学を調べている。
 今年度版の大学案内で教育学部のある大学を調べている侑志がいる高葉ヶ丘高校の進路指導室に、井沢徹平が入ってくる。
 高葉ヶ丘高校の進路指導室で、今朝納豆と海苔とご飯を食べた井沢徹平は、今年度版の大学案内で教育学部のある大学を調べていた新田侑志に声をかける。
 今朝はトーストとハムエッグとコーヒーだった新田侑志、つまり今年度版の大学案内で教育学部のある大学を調べていた新田侑志は、納豆ご飯に生卵を追加するか悩んで結局やめた井沢徹平と、誰もいなかった高葉ヶ丘高校の進路指導室で進路について話をした。
 要するに今朝はトーストとハムエッグとコーヒーだったがトーストをわずかに焦がした新田侑志と、今朝納豆ご飯と一緒に食べた海苔は味付きではなくただの焼き海苔だった井沢徹平が、進路指導室を有する高葉ヶ丘高校を卒業した後、どうしたいかという話である。

【感想】
 はちゃめちゃコピペしてしまった。
 そのままやると「2 複式記述」の劣化版になるなぁと思ったので、ちょっとずつ増やしてみた。ごらんのありさまだ

 

28 無関心  2022/11/02

 朝だとは思いますけど、なにせ自分からはかかっている時計が見えませんものでね……。
 確かに、生徒が一人入ってきましたよ。名前? わかりっこないですよ、自分には人間が全部同じに見えますから。
 何かを読みに来たようでした。ここに来る生徒は大半がそうですし、別段めずらしくもないですよ。
 何を読んでいたかって? 知るわけないですよ。
 その後もう一人やってきて、先にいたのと二言三言話して黙りました。話の内容? いや、興味がないので覚えていません。
 そんなことより聞いてくださいよ。ここのところが剥がれかかっているんですが、なかなか塗料を塗り直してくれなくてね……。

【感想】
 壁目線。小説書いてて壁目線が必要になることある????
 完全にシチュエーションの設定ミスなんだけれども、会話している二人を見ている第三者が用意できなかったのだ……

 

29 ぼく  2022/11/04

 ぼくは進路指導室の資料コーナーに横たわっていた。周囲にはパンフレットや過去問たちが散らばっていて、窮屈だった。
 背の高い学生が入ってきた。朝ばかり来るやつで見覚えがあった。
 学生は資料コーナーを整頓し始めた。ぼくも家に戻してもらえるとほっとした。
 でも学生はぼくだけ手に持ったままで、開いて中身を読み始めた。また角を折られるのはいやだった。その学生はぼくの角を折らなかった。
 新しい学生が入ってきた。仕方ないからそいつにも読まれてやるつもりだった。そいつは別の本を手に取った。なんだ、大学に興味がないのか。

【感想】
 大学案内目線。大学案内目線って何????
 お手本では人間目線で、こんな風に奇数行が黒字・偶数行が赤字になっている。
 全体的に意図がよくわからない文体だった。
「15 別の主観性」「16 客観的に」などとどう差別化すればいいのだろうか?
 と思いながら見ていたら、どうも1アクションごとに「ぼく」のリアクションを挟んでいるようだった。

 

30 現在  2022/11/05

 八時頃の廊下。秋の冷えた空気を、斜めに差し込む朝陽があたためていく。
 上履きのゴムがリノリウムの床を鳴らし、新田侑志は進路指導室のドアに左手の指をかける。
 がららと滑る引き戸。ブラインドの閉まった窓。
 右手が電気のスイッチに触れ、茶色の瞳が光を含んで瞬く。

【感想】
 ただ現在形で書くよりももっと臨場感があった方がいいんだろうな、と思った。
 臨場感って何だろうというところで悩んでしまって、結局これ以上書けなかった。
 

 

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