チューベローズ
薫はおしゃれに命を懸ける高校一年生。
電車に揺られながら、自分を殺すつもりの男を待ち焦がれる。
「あの子」を守るためにはそうするしかないから。
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失せもの探し
「お願い、小春野くんにしか頼めなくて」
ちょっと女装が上手いと(『できる』ではない。『上手い』と)、変わった友人がいる自分に酔いたい連中が寄ってくるから参る。
「初対面でいきなり探し物を手伝えって言われてもね。お友達とかに頼みなよ」
「ダメ! 女の子は信用できない、隠したり盗んだりするかもしれない」
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生き止まり
焼香の順番を待ちながら、僕は教え子の遺影をぼうと見つめた。
卒業してから二ヶ月しか経っていないのに、眼鏡も髪形も変えた君は随分と大人びて見えた。
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アヤメ
「杜若くんっていうんだ! あたしはアヤメだよ」
五条あやめの自己紹介は唐突だった。中学一年の春、杜若颯太は彼女にどう返事をしたのか思い出せない。
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香花
「ちょっと杜若に頼みがあって」
薫は杜若の机に弁当がないのを再確認して、ガラスの小瓶を見せた。四角い容器の半分ほどを、琥珀の液体が満たしている。
「祖母の形見整理してたら出てきたんだけど。箱とかもないし、何の香りなのかはっきりしなくて」
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