300ss

生き止まり

焼香の順番を待ちながら、僕は教え子の遺影をぼうと見つめた。
卒業してから二ヶ月しか経っていないのに、眼鏡も髪形も変えた君は随分と大人びて見えた。

黒が劣勢

弱モードでも夜中の換気扇はよく響いて、気遣い虚しく妻が起きてきてしまった。
「禁煙って約束したのに。私もこの子もどうでもいいんだね」
妻はまだぺちゃんこのお腹を撫でながら恨みがましく言う。

運想

壁にかかる60インチ4Kテレビ。為一は新居のフローリングに座って真っ黒な画面を眺めている。
結婚しよう――たった一言で二年に及んだ同棲は終わった。三つ上の彼女を喜ばせるはずだった幻想のために。